コンクリートは我々の身近な建築材料で、誰でも1度は目にしたり触ったりしたことがある物質だろう。そのコンクリートに自己修復する機能を持たせ、長寿命化する技術がアメリカの大学から報告された。下はその報告であるが、まずその前にコンクリートとは何ぞや、というところから少し調べてみた。
コンクリートは、セメント成分と砂利等を混合して固めたもので、建築材料、土木材料として広く用いられる。マンションの施工現場等に行くと鉄筋コンクリートで基礎が作られる様子をみることができる。更にセメントとは、セラミックスの1種で、カルシウム(Ca)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)のそれぞれの酸化物の複合体である。Caはアルカリ土類金属の1つで、その化合物の水溶液がアルカリ性を示す性質がある。
コンクリートは鉄筋コンクリートの形で使用されることが多い。コンクリートは一般に圧縮方向の力には強いが引張方向の力には弱い傾向があり、鉄筋を入れることで引張方向の強度を大きく向上させる。更に、鉄は一般に大気中で容易に錆びてしまうが、実はアルカリ性の環境では非常に錆びにくい。先ほど記載したように、コンクリートの主要成分であるセメントは水に触れるとアルカリ性を示すため、鉄筋コンクリート内の鉄は非常に錆びにくくなる。このため鉄筋コンクリートはお互いの弱いところを補い合う関係にあり、複合材料の優等生である。
そのような鉄筋コンクリートは当然応力を受ける部位に使用され、引張方向の力が加わるとコンクリート内にクラックが発生する場合がある。微小なクラックがあっても鉄筋があるので機械的な特性は大きく低下しないが、クラックから水等が侵入してくると内部の鉄を錆びさせるために鉄筋コンクリートの特性が徐々に劣化することになる。今回の報告はこのようなコンクリート内のクラックを自己修復する技術に関するものである。
今回、コンクリート中に生物の血液中に存在する炭酸脱水酵素を添加した。炭酸脱水酵素は、血液中で赤血球が二酸化炭素と結合する反応を促進する酵素である。赤血球は、肺で酸素と結合し、身体の各部位で酸素を手放し、逆に二酸化炭素と結合して、今度は肺で二酸化炭素を手放すことで体内の酸素と二酸化炭素を運搬している。この酵素をコンクリートに添加すると、クラックには大気中の二酸化炭素があるのでクラック内で二酸化炭素とコンクリート成分が反応しやすくなり、これによりクラックが修復される、という筋書きのようだ。コンクリートに水が浸入するとカルシウム成分が溶出して、これはアルカリ性であるため酸性である二酸化炭素と反応しやすく、このような反応が起こる。
このような技術により材料の寿命が延びると、メンテナンスの頻度を減らすことが可能となり、また建築物の建替えも減らすことができるので、社会的なコスト低減に繋がる。インフラに関する話はどうしても地味な話になってしまうが、重要な話でもある。
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