恐らく文明が進歩する前の人々は現在人よりも多く運動しただろう。交通機関が発達していない世の中では、自力で移動する以外に移動する方法がない。昔の飛脚は「ナンバ走り」:右手と右足を一緒に前に出す走り方 をしたとも言われているが、真偽のほどは定かでない。
それに比較して、現在人はあまり運動しなくなったので、運動不足による疾病を発症しやすくなり、成人病等と呼ばれることが多い。肥満や高カロリー食、高塩分食に由来する糖尿病、痛風、高血圧等がそれに相当する。
日常的に運動する人はそうでない人に比べて心拍数が低下する傾向がある。心肺機能が高まったために少しの鼓動で全身に酸素を供給できるようになったということであろう。スポーツ心臓、などとも呼ばれることがある。しかし、このような状態で心電図をとると不整脈という診断をされることもある。あるいは徐脈(脈拍数が少ない状態)などとも。そうであっても通常の生活に支障がなければ問題ないとされてきた。
しかし、最近スポーツをする人の心臓は心房細動を起こしやすい、という研究が報告された。心房細動というのは不整脈の一種で、心房(心臓の上半分、血液が戻ってくる方)が電気的に痙攣する症状のようだ。ひどくなると血栓ができやすくなってこれが脳に行って脳梗塞になる可能性があるとされている。
新たに報告されたのは、これまでに報告された13個の研究のレビューで、これによると継続的にスポーツをしている人(アスリート)の心房細動リスクは、そうでない人の2.5倍に達するという。更に若年層(55歳未満)アスリートでは高年齢層(55歳以上)アスリートの3.6倍に達するそうだ。研究はまた、サッカー、ラグビー等のリスクがオリエンテーリング、ボート等の持久力系のスポーツよりも高いと述べている。
運動により、成長ホルモンの分泌が盛んになることも知られている。成長ホルモンは若い年代で分泌されやすく、加齢とともに分泌量が減ってくる(下のリンク)。ある調査では60歳の成長ホルモン量は20~30歳の半分になっているようだ。成長ホルモンが分泌されると筋肉がつきやすく、結果として代謝量が上がり、太りにくい。若者が太りにくい要因の1つにもなっているだろう。この成長ホルモンを分泌させるためには、有酸素運動よりも無酸素運動の方が有効ともされている。筋トレのような運動が有効だろう。
成長ホルモンではないが、性ホルモンの分泌も運動によって促進される。下は50歳前後の男性を対象に月間のランニング量と男性ホルモン分泌量の関係を示したもので、月間走行距離100kmまでは走行距離と共に男性ホルモンの分泌が促進されるが、これを過ぎると逆に減り始めて150kmを超すと走らない人よりも分泌量が減っている。これも激しすぎる運動は健康を損なう可能性が高いことの良い例であろう。何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。適度な運動と適度な食事が健康の基なのだろう。

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