シンギュラリティが2045年に訪れるという予想がある。ここで言うシンギュラリティは一般に人工知能が人間の知能を凌駕すると認識されていることが多いが、これを提唱したレイ・カーツワイルの定義は「1000ドルで買えるPCの性能が人類全体の知性を凌駕する」ことで、ということは人工知能が人間のそれを凌駕するのは2045年よりもずっと早いことになる。レイ・カーツワイルの考え方の本質は寧ろ「収穫加速の法則」の方にある。収穫加速の法則とは、時間に対して技術は指数関数的に伸長するというもので、要は一般の人が考えるよりも技術の進歩は遥かに早いということを意味する。収穫加速の法則というよりも、エクスポネンシャル・テクノロジーと言った方が通りが良いかもしれない。
このエクスポネンシャル・テクノロジーを最も端的に表すのはPCの性能だろうが、これ以外にも再生可能エネルギーが挙げられる。シンギュラリティ大学(レイ・カーツワイルらが主催する団体)が2018年に公表している予測によると、2024年には再生可能エネルギー(太陽光や風力発電)のコストが1kWh当たり1セントまで低下し、2028年には再生可能エネルギーが電力供給をほぼ100%提供するようになるとしている。下は総務省が公表している資料で、シンギュラリティ大学に参加した方が上のようなことを記載している。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000566103.pdf
日本での一般的な認識は再生可能エネルギーは高いという方が多いと思うが、実際は世界的には再生可能エネルギーのコストは劇的に低下している。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)という組織があり、ここが再生可能エネルギーのコストを公表している。2020年のレポートによると、2020年の再生可能エネルギーのコストは2010年に比べて大幅に低減し、特に太陽光発電については2010年比で85%低下したことが記載されている。これによると、2010年は1kWh当たり0.381ドルであったものが2020年には0.057ドル(5.7セント)まで低下したそうだ。この数字を見ると、シンギュラリティ大学の予想は厳密には当たらないかもしれないが、オーダー感としては十分的中しそうだ。下の図は2020年のIRENAレポートからコピーしたコスト低下を示す図で、そのソースも示す。


それでは日本国内ではどのようなコストになっているかについても調べてみた。資源エネルギー庁が今年の8月にレポートを出していて、それによると2020年段階の火力発電(LNG原料)は10.7円/kWh、太陽光発電の事業用で12.9円/kWhとなっている。思ったよりコスト差は小さい印象だ。これが2030年にどうなるかの予測も出していて、火力:10.7-14.3円/kWh、太陽光(事業):8.7-14.9円/kWhという数字を挙げている。資源エネルギー庁としても2030年には太陽光発電の方が火力よりも安くなる予想をしているということになる。風力発電は日本ではかなりコストが高い。島国で場所が限られるのでこれはやむなしか。下は資源エネルギー庁資料の抜粋の図(2030年の予測コスト)と資料のリンク。

エクスポネンシャルな変化は感じにくいという点を踏まえると、日本でも再生エネルギーコストは資源エネルギー庁の予測よりも早く低下する可能性もある。特に最近新しいタイプの太陽電池の研究開発が活発化していることもコスト低減を後押しするようにも思える。日本で電力コストが大幅に低下すると、産業構造にも影響しそうなので注目しておくべき項目のような気がする。
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