以前、太陽光発電のコストが大きく低下していることを記載した。その中ではコストについてしか述べていないが、コストが低下する大きな要因として新しい太陽電池が続々と誕生していることがある。もっとも一般的な太陽電池は結晶型のシリコン(ケイ素)で、この太陽電池の効率も年を追うごとに向上しているが、他のタイプの太陽電池も沢山開発されている。例えば化合物型(CIGS、CdTe等)、有機半導体型、ペロブスカイト型等で、NREL(米国国立再生可能エネルギー研究所)がこれらの効率の推移をまとめており、NRELチャート等と呼ばれている。
これによると、単結晶シリコンで約33%の効率が得られており、最近急激に効率を上げているのがペロブスカイト型太陽電池で約26%まで追い上げている。ペロブスカイト型太陽電池は製造コストを低減でき、薄膜化、軽量化が可能ということで期待が高まっている。今回はこれらではなく、TMD(遷移金属ダイカルコゲナイド)型の太陽電池で高効率が達成されたという報告があったため、これを取り上げてみた。
TMD:遷移金属ダイカルコゲナイドとは遷移金属元素(Fe:鉄、Mo:モリブデン、Cr:クロム、Mn:マンガン等)とカルコゲン(酸素族、周期律表の酸素と同じ列にある元素の酸素以外、S:硫黄、Se:セレン等)の化合物を指し、ダイはカルコゲン原子が2個であることを示す。つまり通常遷移金属をM、カルコゲンをXとするとMX2のような化学式で表される。具体的にはMoS2、WSe2等が挙げられる。
このようなTMDは色々と興味深い特性を示すことから最近各地で研究され、太陽電池材料としても注目されている。今回スタンフォード大学が6μmという薄膜で約5%の変換効率を示すという研究が報告された。ポリ袋と同程度の厚みということで、人間の皮膚にも装着可能ということだ。

薄膜で柔軟という点ではペロブスカイト型太陽電池も同様だが、現状のペロブスカイト型太陽電池はPb:鉛を含有するものが多い。鉛は生物に対して毒性を示すため、本当は鉛フリーとすることが望ましいがまだ実現できていない。従ってペロブスカイト型太陽電池を人体に装着することは現状では難しい。今回のTMD型太陽電池の化合物はWSe2:セレン化タングステンでPbを使用しないということが売りとなっている。しかし、実はSeも人体の必須元素ではあるものの必要以上に摂取すると毒性はあるとされているので、化合物から容易に溶け出すことがないか等も考慮しなければいけないのだろう。
なお、TMDの多くは層状化合物で、平面的な強い結合と平面間の弱い結合から構成される。鉛筆の芯で使用されるグラファイトも同様の構造を持ち、グラファイトの1つの層だけを取り出したものがグラフェンと呼ばれ、単層にすることでグラファイトとは異なる多くの物性が発現することから盛んに研究されている。カーボンナノチューブもグラフェンを筒状にしたものだ。

TMDも同様に1つの層だけを取り出すことができ、やはり興味深い物性を示すようだ。今後新しい半導体材料としても期待されている。材料屋の端くれとしては、是非日本の大学なり企業なりに存在感を発揮してほしいところだ。
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