企業での研究者と大学の研究者の大きな違いは、企業研究者は特許を出願して自社の権利範囲を拡大することを指向しているところにある。最近は大学からも特許出願されるようになったが、大学研究者の評価は論文によるところが大きい。企業研究者は自社の知見をたやすく社外発表できないこともあり、特許で評価されるところもある。企業研究者を長く続けてきたので、特許は昔から沢山書いてきた。昔の特許明細書に比べて最近の特許明細書はページ数が多くなっているので、その作成負荷は年々大きくなっている。最近ではA4で20~30ページのものも珍しくなくなってきた。特許明細書に記載すべき内容は特許法で決まっているので、ある程度定型文書とも言える。このため3-4年前に特許の自動作成はできないものだろうか、できたらきっとビジネスになるだろうと思って調べたことがあった。最近日本の会社が特許の自動作成技術を開発したという情報を得たので紹介する。
特許明細書を作成するプロの資格として弁理士があることはご存じの方も多いだろうが、弁理士法75条で特許出願の手続と、それに関する書類作成を業務として行うことは禁じられている。このとき、AIで特許明細書を作成すること(を業務として行うこと)は許容されるか、という微妙な問題があり、これをAIによる明細書作成会社が経産省に確認したところOKが出た、というニュースが下の日経報道である。

このAIによる明細書作成会社はAI Samuraiという会社で、Webサイトを見ると大阪大学と北陸先端科学技術大学との連携を前面に押出しているようなので、この辺りの大学の技術を利用しているのかもしれない。元々は特許調査や分析を提供する会社であったものが業務を拡大して明細書自動作成技術に踏込んだようだ。

このAI Samuraiの紹介ウェビナーを聴かせて頂いたところ、現段階はまだ半自動生成のようなイメージで、1次原稿をこのサービスで作成してその後弁理士が手直しして明細書を完成させる前提ということだった。また、図面を作成することはできないので、図面は別途作成しなければいけない。とは言え、この技術領域は進歩が速いので、いずれ全自動作成ができるようになるのかもしれない。
今回改めて特許明細書の自動作成について検索したところ、このAI Samurai以外にも明細書の半自動作成サービスを提供しているところを見つけた。株式会社ARDという会社が2016年からPatentGeneratorという明細書の半自動作成サービスを提供している。この会社もAI Samuraiと同様に特許調査、分析や明細書の内容を評価するシステムからスタートしたように見える。
3-4年前に調べたときはPatentGeneratorには気付かず、日本国内にはそのようなものはないと思っていた。その当時、米国で1社それに近いものを見つけた。Specifioという会社で、ソフトウェアに関する特許明細書の自動作成をするというものだ。ソフトウェア限定だが、図面も自動作成してくれるようだ。
今回調査して、米国のものは相変わらずSpecifioしか見つからなかった。ということは日本の方が先行しているようにも見える。今回中国は調べていないが、実は中国にもあるのかもしれない。
なお、これらを利用するときには、特許請求範囲はこちらが与えてやらなければならない。特許請求範囲というのは、特許で権利化したい内容で発明そのものなので、流石にそれは自動では作成できないのだろう。しかし近い将来にはアイデアを入力するだけで特許請求範囲、つまり発明そのものもしてくれるようなものもできるのではないだろうか。このようなサービスが普及すると弁理士は職を失ってしまうことになる。士業についているからといっても安穏とできない時代ではある。
#特許明細書自動作成 #AISamurai #PatentGenerator #Specifio

コメント