駅の本屋に立ち寄った際にたまたま目についた本を買って読んだ。「腎臓が寿命を決める 老化加速物質リンを最速で排出する」という本で、自治医科大学の黒尾誠氏の著作である。要点は、リン酸カルシウムを主成分とする骨から排出されて血液内に漂うリンとカルシウムを含む微小な浮遊物(コロイド)が生物の老化に大きな影響を及ぼしているという指摘である。この本はまた腎臓の役割を解説していて、単に体内の不要物、老廃物を体外に排出する役割だけではなく、種々のホルモンを分泌することで他の臓器と連係して血中の色々な成分濃度を管理する役割も果たしている事が記載されていて、勉強になった。
動物には寿命があってどう頑張っても500年しか生きられないのに、植物は数千年を生きるものがあるのが昔から疑問であった。この本の考え方を拡張すると、動物はリン酸カルシウムを主成分とする骨格を獲得することで地上で自由に動けるようになったが、それが故に血中にリンとカルシウムが漏れ出して寿命が制限されてしまった、という仮説が成立つ。この仮説は果たして正しいのか? と思って動物と植物の寿命を少し調べてみた。
生物学者の更科功氏によると、植物特に大木は数千年生きることができるものの、中心に近い部分の細胞は死んで単なる構造物と化し、外側の部分のみが生き続けるのだと言う。成長とともに生きている部分はどんどん外側に移動していくため、その部位だけに着目すると寿命はせいぜい数十年だそうだ。どんどん部品を交換しながら同じ形を維持していく、というのはどこか「テセウスの船」を思い出させる。

以前参照したこともある書籍「LIFESPAN 老いなき世界」によると、動物はそのリソースを有効に活用するために多産多死タイプか、少産少死タイプのどちらかを選択するようにできているという。多産多死タイプは寿命を延ばす意味がないので短寿命で、少産少死タイプは1個体の役割が相対的に大きいため長寿命になる傾向にある。なので、食物連鎖の頂点に立つ生物は後者を選択する可能性が大きく従って長寿命になる傾向にあるようだ。
そのように考えると長寿命の生物は大型生物で食物連鎖の上位に来そうなものが多い。超長寿命で知られるニシオンデンザメも然り、クジラの寿命も長いようだがこれも然り、ガラパゴスゾウガメもガラパゴス諸島では食物連鎖の頂点に位置するらしい。島に閉じ込められてそこで敵がいなくなると、寿命を延ばす方向に進化が進むということなのだろう。また、クラゲ等で無限に近いほどの長寿命の動物もいるが、これらは何となく植物型でどんどんと部品が新しくなっていっている感がある。
このような事例を見ていくと、冒頭の骨格中のリンとカルシウムが血中に漏れるという説も正しいかどうかは自信がなくなってくる。植物が本当に長寿命なのかも不確かにも思える。とは言え、腎臓をはじめとする臓器が劣化すると生きられないのも事実だ。人間も臓器を取り換えていけるようになると、テセウスの船方式で無限の寿命が得られるようになるのかもしれない。
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