金属と水から水素を取出す

脱炭素社会の構築に向けて水素をエネルギー源とする社会構造が望まれている。本当に脱炭素が必要か?ということについての疑義はあるものの、水素がクリーンなエネルギーであることに間違いはないと思われる。現状は水素の製造コストが高いため大量に使用することは難しい。このため水素を安価に大量に製造する技術開発が求められる。今回、アルミニウムと水を用いて水素を効率的に製造する研究成果が報告されていたため、この辺りを少し調べてみた。

今回報告されたのは、カルフォルニア大学によるもので、共に金属であるアルミニウムとガリウムを適正に混ぜた混合物と水とを常温で反応させると高効率でアルミニウムと水が反応して水素が発生した、とうものである。

Easy aluminum nanoparticles for rapid, efficient hydrogen generation from water
UCSC chemists developed a simple method to make aluminum nanoparticles that split water and generate hydrogen gas rapidl...

金属と水が反応して水素が発生することは珍しい反応ではなく、ナトリウムのようなアルカリ金属と呼ばれる金属は水と反応して水素を発生する。ナトリウムは金属状態であるよりも極めてイオンになりやすい性質を持ち、水中の酸素を奪って結果として水素が発生するためである。アルミニウムもイオンになりやすい金属なので、同様に水と反応して水素を発生してもおかしくはない。しかしアルミニウムが酸素と反応した酸化物(アルミナ)は非常に安定で、その後のアルミニウムの反応を止めてしまうために通常はアルミニウムと水が反応することはない。

今回はアルミニウムとガリウムを混合することで、ガリウムがアルミニウムの酸化物形成を阻害し、かつアルミニウムをナノ粒子にするためアルミニウムと水の反応が円滑に進行するということを報告している。このためにはアルミニウムとガリウムの比率を1:3とすることが適正で、ガリウム自体は反応に関与しないので、アルミニウムが反応した後に分離して再使用できるとされている。

ただ、通常アルミニウムは電解精錬で製造されるため製造時に電気を使用している。この電気の製造のために火力発電が使用されているのであれば、結局化石原料を使用して水素を製造することになるのであまり意味がない。しかし論文では例えばアルミ缶やアルミホイルのような廃棄物を使用して水素を製造できることに意味がある、と主張しているようだ。

上で述べたように、アルミニウムは本来的には水と反応して水素を生成しやすい金属であるが、表面の酸化物がそれを阻害している。このためアルミニウム、あるいはその化合物は水と反応して水素を発生しやすい傾向がある。上とは別の系の話であるた、次のような論文も報告されている。

Hydrogen generation by aluminum hydrolysis using the Fe2Al5 intermetallic compound
Intermetallic phases with high aluminum content release hydrogen naturally; this is due to their susceptibility to hydro...

この論文では、アルミニウムと鉄と反応物である鉄アルミナイド(Fe2Al5)の微粒子を水と反応させるとやはり水素が発生することが報告されている。面白いと思われるのは、水のpHを変化させることでアルミニウムの反応効率が変化し、pHを上昇させると効率が高くなり、pH=14においては100%を超えるとされていることである。これは鉄アルミナイド中のアルミニウムだけでなく鉄も反応して水素が発生していることを意味している。鉄は通常は水と反応して錆びることはあっても水素が発生することはない。しかしアルミニウムとの反応物とすることで鉄であっても水と反応させて水素を取出すことができる、ということになるのであれば、低コスト化に繋がる可能性がある。

水素を安価に製造する技術は、日本でも国が主体となって技術開発を進めている。色々なアプローチがあると思うが、金属あるいは金属の化合物を上手く使用するという考え方もありそうだ。

#水素製造 #常温

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