最近Twitterを買収してますますマスコミ等からの報道が多くなったイーロン・マスクについてはもはや説明する必要がないだろうが、今日はそのイーロン・マスクがCEOを務める(現在はCEOという名前ではないようだが)TESLA社について調べてみた。
TESLA社ももはや説明不要の有名企業で、電気自動車を生産している。2014年に本格的に市場投入されたモデルSのバッテリーでは既存のリチウムイオン電池(パナソニックの18650)を大量に一体化してパッケージ化していた。つまりここではあまり新しい技術を開発したようには見えず、どちらかというとアップルのようにイメージ戦略とソフトウェアで電気自動車を売っている会社のような印象をこれまで持っていた。
しかし最近ふとしたことから調べてみると、技術開発力も相当なものであることに気がついた。バッテリーに関しては電池の開発はパナソニックが行っているようなので、その部分ではあまり感じられないが、そのバッテリーから発生する熱を管理する熱マネジメントシステムを新たに開発してモデルYに搭載している。その名前は「オクトバルブ」といい、専用に設計されているものだ。下の記事にあるように、従来の自動車技術では熱の一元管理という発送はあまりなかったようで、かなり珍しいものであるようだ。

更に、上の熱マネジメントはまだバッテリーと関係する話なのでまだ分からなくはないが、車体製造に関しても新しい技術を開発して導入している。それが「ギガプレス」と呼ばれるものだ。通常の車体は鉄を細かい部品ごとにプレス成型して、それらを溶接でつなげて作るものであるが、これをアルミニウムのダイキャストに変えてしまったということだ。ダイキャストとは溶融した金属をプレス成形するとともにプレス機内の金型で冷やして固めて部品を製造するものである。車体のような大型部品を製造するためには、大型のプレス機が必要となり、これが「ギガプレス」という訳だ。
こうすることで溶接の工程がまるまる不要となり、プレスも1回やれば終わりとなる。また通常のプレスでは材料を全部使いきることができないが、ダイキャストなら材料全部が部品となる。これらの効果で大幅な部品の低コスト化と軽量化を達成したという。

この動きにボルボなどは追随する動きを見せている。日本の自動車会社がどうするのかはまだ不透明だが、もし世界的にこのような動きが起こると、国内の製造業への影響は極めて大きくなるだろう。何しろ自動車会社は大量の系列部品会社を抱えているが、これらが不要になる可能性がある。また車の素材も鉄からアルミニウムに変更されることになるので鉄鋼会社への影響も大きいだろう。
ギガプレス方式の欠点として、一体成型してしまっているので、もし事故などで一部が損傷したときに全部交換しなければならない、ということが挙げられる。現在は部品を溶接して作っているためその部品のみを交換することができる。しかしそもそも運転を自動化して衝突しない車を目指しているのだろうから、将来的にはあまり大きな問題ではないように思われる。
このギガプレス用の合金もTESLA技術陣が新たに開発したとのことだ。興味があってGoogle Patentsを用いて特許を調べてみたところ、TESLAから幾つかのダイキャスト用アルミニウム合金が出願されていた。報道ではアルミニウムとシリコンをベースにしているということなので、恐らく該当する特許は下ではないかと思われる。
これを見るとアルミニウムとシリコンに加えてTiB2という化合物を含有することが特徴であるように見える。TiB2はアルミニウム合金鋳造物の組織を細かくすることが知られているので、恐らくそれを狙ったものなのだろう。
日本の自動車会社はこれまで自動車の生産技術を高度化させることで廉価で高品質な車を世界に提供してきたが、その工夫を全てひっくり返すような状況が産まれつつある。そしてこのような破壊的なイノベーションはあまり日本からは産まれてこない。イノベーションは1人の突出した人間から生まれる事が多く、そのような出る杭を許さない日本の社会構造が原因のような気がしている。
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