主として金属材料に関する研究開発を長年やってきたため、材料については興味があって新しい技術動向を確認している。一般に材料の表面というのは材料内部と大きく異なることが知られている。これは材料内部はすべての方向に原子あるいは分子が詰まってそれらから力を受けているのに対して、材料の最表面はもはや表面側には原子あるいは分子がないために内側からしか力を受けることがないことが大きな原因である。このため新たに表面を形成するには余分なエネルギーが必要となり、これは表面張力として知られている。
物質を砕いていってその径が小さくなればなるほど物質全体における表面の割合は増えていくので、粉体などの微粒子においては表面の影響が非常に大きくなる。このような意味でナノメートルレベルの微粒子、ナノ粒子は同じ物質であっても通常の大きさの物質とは大きく異なる性質を示すことが多い。
最近ニュースを見ていて、ナノ粒子がガンの治療に使用されようとしている話があったため、少し状況を調べてみた。ガン細胞が通常の細胞よりも高温に弱いということは最近では比較的知られてきており、ガン細胞を温めて殺す方法は温熱療法として知られている。
温熱療法であればナノ粒子は特に関係ないが、最近では光温熱療法というような方法も検討されている。これはナノ粒子を体内に導入し、それをガン細胞に濃化させ、そこに近赤外線(赤外線の一種)やレーザー光を照射するとその光とナノ粒子の相互作用によりナノ粒子から熱を発生してその近傍のガン細胞を死滅させる、という考え方のものである。更に光とナノ粒子の相互作用で蛍光発光もされるのでがん細胞のイメージング画像も同時に撮影できる、という一石二鳥的な方法である。蛍光発光というのは、物質が光を吸収してエネルギーが高い状態となり、それが低い状態に変化する際に発する光のことを意味する。下の研究はそのような効果を発揮するナノ粒子の開発に成功した、というもので、この記事によるとナノ粒子の製造コストも大きくない、とされている。
調べてみると、このような光温熱療法に関する報告は幾つかあり、これまで金のナノ粒子が幾つか報告されていた。確かに金に比べると上記の物質(BCGCR)の製造コストが大きくないというのはそうなのだろう。
ところで、前記したように物質をナノ粒子にすると従来の物性とは異なる特性を示すことが多いため、色々な物質をナノ粒子とすることで得られる特性を活用しようという研究は他にも幾つかの分野で行われているようだ。ナノ粒子にすることで表面積が相対的に増大するため、触媒分野でこれまで使用されてきた印象がある。例えば自動車の排気系素材に使用される触媒としてはPt(プラチナ)やPd(パラジウム)等の貴金属が主として使用されているが、高価な貴金属であるPtもナノ粒子として表面積を大きくすることで少量で使用できるため工業化することができた。ちなみにこの触媒は自動車の排気ガスの窒素酸化物をアンモニアに還元し、炭化水素と一酸化炭素は二酸化炭素に酸化してくれる。1つの触媒で酸化反応と還元反応を同時に行ってくれるという優れものの触媒である。このような触媒分野だけではなく、今後は医療分野や二次電池製造分野でも活用しようという取組みが下に記載されている。
電池関係で、急速充電可能な電池や3Dプリンタでの電池製造技術についても研究されているようで、このような分野も面白そうなので引き続きウォッチしていきたい。
#光温熱療法 #ナノ粒子 #触媒

コメント