GoogleやIBM等が量子コンピュータの開発を進めていて、特定の領域の課題を通常のコンピュータよりも遥かに高速で計算することができることが時々ニュースで報道される。量子コンピュータは、一般に材料開発や医薬品開発に力を発揮すると言われているため、材料に携わる者としては気になる存在だ。ところで最近疑似量子コンピュータという言葉を耳にすることがあった。「疑似量子」とは何のことだろうかと思って少し調べてみた。
量子コンピュータとは、量子力学的な事象を利用して並列計算を高速で行うことのできるコンピュータであるが、少なくとも現状は絶対零度(-273℃)近くまで冷却しないと動作しないようで、膨大な冷却装置が必要になる。これに対して疑似量子コンピュータとは、正確な意味の量子コンピュータではないものの、量子コンピュータが得意とされる「組合せ最適化問題」に特化して極低温冷却を必要とせずに使用でき、量子コンピュータと同じような作用をするコンピュータというものであるようだ。特に日本国内で多く展開されている印象だ。
そもそも量子コンピュータには量子ゲート方式と量子アニーリング方式の2種類があり、Google等が発表しているのは量子ゲート方式となる。これに対して量子アニーリング方式は「組合せ最適化問題」に特化したものであり、この量子アニーリング方式を量子を使用せずに既存の半導体上で再現させることを目指している、といったところだろう。開発を手掛けているのは日立、富士通などの日本を代表するような企業で、日立の解説がわかりやすかった。量子アニーリング方式というのは、イジングモデルを解くことを目指していて、日立が手掛けているのはCMOSアニーリングという技術で、CMOSという半導体上でイジングモデルを解いている。イジングモデルというのは統計力学上の物理モデルで、スピンを持つ粒子の相互作用を表現することに用いられている。

要は、量子ゲート方式、量子アニーリング方式、疑似量子方式、通常のコンピュータという順に計算の汎用性や計算速度が低下していて、いわゆる量子コンピュータと通常のコンピュータの中間領域の技術という位置づけとなる。とは言え、これまでのものよりは計算速度が上昇していて、既存技術の延長線上にあるため展開することは容易だ。このような分野はこれまでの日本企業が得意としてきた分野でもある。
この量子コンピュータを用いて材料開発を行うような取組みも既に公表されていて、下に挙げているように、日立と積水化学が共同でこの技術を用いたMI(マテリアルズインフォマティクス)に取組むニュースや、富士通と昭和電工が共同で半導体材料開発の高速化を目指しているというニュースが出てきた。

素材系も日本企業がこれまで強みを持っていた分野なので、このような取組みでうまく成果をあげることができれば、この分野に注目が集まり、更に多くの企業が参入するようになって良い循環が産まれるかもしれない。自分が現在取組んでいるマテリアルズインフォマティクスとも関連する話なので、今後も注目すべき領域という気がする。
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