最近のNatureに金属疲労による亀裂が自己修復する、という論文が掲載された。金属材料に関する論文がNature誌に掲載されるのは珍しい。それだけ金属分野が成熟技術ということであろう。その中で新しい発見があったということなので、少し調べてみることにした。下はSandia National Laboratoriesのプレスリリース。米国の国立研究所であっても、ScienceでなくNatureに投稿するところが面白い。やはりNature誌のネームバリューは大きいということか。

そもそも金属疲労とは何ぞや、というところから。金属に応力を加えていくとあるところまでは耐えられるが、それ以上になると破壊に至る。しかし、実用上金属を応力限界で設計すると、計算上の応力よりも遥かに小さい応力で破壊することが多い。この原因が金属疲労という現象である。金属疲労は、破断応力よりも小さい応力が繰り返し継続的に加わることで破断が起こってしまう現象で、応力の大きさと応力の回数とで決定される。通常回数は100万回とかに設定されることが多く、100万回の応力を付与しても破断しない応力が疲労強度と呼ばれ、振動が加わる部品等はこの疲労強度で設計されることになる。鉄鋼材料であれば疲労強度は破断強度の約1/2、材料によっては1/3となってしまうため、影響は大きい。

今回の研究によると、白金のナノ粒子を引張試験したところ、発生した微細な亀裂が自己修復されたとのこと。ポイントはナノ粒子ということころで、通常の大きさの試験片では起こらない現象がナノ粒子で発現したということのようだ。金属は10μm程度の結晶という粒子で構成され、結晶と結晶の界面を結晶粒界と呼ぶ。通常サイズの試験片ではこの結晶粒界を微細な亀裂が伝播していくことが多いが、今回のナノ粒子ではこの粒界が亀裂の修復に貢献しているようで、なかなか奥が深そうな現象が観察されている。
それではこれまでこのような技術はなかったのかという観点で調べると、早稲田大学が金属疲労を治癒する技術を開発していたので、そのリンクを下に示す。内部に微細な疲労亀裂が発生している材料に熱をうまく加えることで修復するという内容となっている。それだけ金属疲労の害は大きく、治癒することで大きな経済効果が得られることを示している。

金属の疲労現象については、表面の影響が大きいことも知られている。例えば曲げ加工のような加工を考えたときに最も応力が大きくなるのは最表面であることからも、表面の影響が大きいことは想像しやすい。通常の試験片においては、表面は疲労強度に悪影響を及ぼすことが多い。その一方で一般に試験片のサイズが小さくなるほど、相対的に表面積が大きくなる。つまり、通常の感覚からはナノ粒子では疲労強度に不利なように思えるが、今回ナノ粒子のような極めて表面の影響が大きい試験片で疲労が回復するというのも材料の奥深さを示しているように思える。いずれにせよ、このような予想外の現象を解明していくことで材料の信頼性が向上していくと思われ、今後の研究の進展に期待したい。
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