モノを作る材料として多く用いられているものは、金属、プラスチック(高分子)、セラミックス(セメント、ガラス等)が代表的だろう。プラスチックはその名の通りに柔らかく成形自由度が高い。金属も強度は色々変えられ、強度が高くなると成形し難くなるものの、成形は十分可能なものが多い。これに対してセラミックスは一般に硬く、脆い性質を持っている。ガラスのイメージが代表的だろう。
従って金属は板状、あるいは棒状、線状に工場で製造したものを市場に供給して市場で成形、変形させて最終製品にするのが一般的であるが、セラミックスはそれができないので工場でほぼ最終形状にしたものを市場に供給する形になる。また一般に脆い材料というのは信頼性に劣るため、安全に直結するような強度部材には金属製品が用いられることが多い。コンクリートは建築物に多用されているが、あくまで鉄筋コンクリートという複合材料にして鉄筋の部分で脆性を回避している。
セラミックスが脆性であるのは不可避であると思っていたが、最近の報告でこれを回避できる可能性が見いだされつつあるようだ。下は東京大学のプレスリリースで、柔軟なセラミックスを製造できました、というもの。
30年以上前ではあるものの大学時代の研究室でセラミックスを扱っていたのでこの辺りにはかなり興味がある。一体どうやって? と思ったのだが、セラミックスを製造するときに電気を流すことが肝であるようだ。一般にセラミックスは電気を通さないので、電気を流そうとも、電気を流して何かが変わるともあまり考えないが、2010年頃にそれをやった研究者がいて、電気を流すことでセラミックス内部に欠陥が多く導入されることが分かったということだ。
セラミックスは一般に微細な酸化物の粉末を準備して、これを押し固めて狙いの形状とし、高温の炉に入れて焼き固めることで製造する。ガラスの製造方法はこれとは異なるが、ここではアルミナ(酸化アルミニウム)やシリカ(酸化シリコン)のようなセラミックスをイメージしている。炉の中で焼き固めることを焼結と呼び、この焼結の状態が電気を流す時と流さない時とで大きく変化し、電気を流すことで低温側、短時間側で焼結が可能になるということだ。焼結が起こりやすくなるということで、焼結の時には物質(原子)の移動が必要で、電気を流すことで物質移動が起こりやすくなっている。その理由は、電気を流すことでセラミックス内部に多数の欠陥が導入され、この欠陥を通じて物質移動が起こるようなイメージとなる。
今回の東京大学の研究では、この現象を利用して電気を流しながらゆっくりと成形してやるとセラミックスも変形が可能となることを見出したもののようだ。電気を流すと欠陥が多く導入され、これに加えてゆっくり変形すると少し変形した後に欠陥を通じて物質移動と結晶の再配置が起こっていくために割れずに成形できるということらしい。ゆっくり変形させる必要があるため工業的にすぐ利用できる訳ではないが、それでも従来の壁を破った意義は大きい。また、電気を流すことで欠陥が多く導入されることは新しい材料開発にも繋がる話で、最初に電気を流した研究者には敬服する。
学生時代、毎日のように粉末を固めて焼結させていたが、そこで電気を流そうとは全く思わなかったし、周囲の人間もそうだった。大発見をする人とそうでない人との違いはここにあるのかな、という気もしないでもない。なお、セラミックスに電気を流した時の焼結挙動についての解説を東京大学の先生がされているので、下にリンクを張る。
#柔軟なセラミックス #焼結

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