ネゲントロピーと生命

熱力学には第一法則から第三法則まであり、第一法則はエネルギー保存則、第二法則はエントロピー増大の法則として知られる。エネルギー保存則は感覚的に分かりやすいが、エントロピー増大の法則はやや分かりにくい。そもそもエントロピーという概念が直感的に分かりにくいところも影響しているのだろう。高校の物理の教科書には、「乱雑さ」と記載されていたように、秩序だっていないことを示す概念である。

エントロピー増大の法則によりエントロピーは増大し続け、秩序は段々と壊れていく。熱湯と冷水のような温度差のあるものを混ぜると温度差がなくなっていき、水にインクを落とすと段々と均一になっていく。このため、19世紀には宇宙は段々と均一化していってその後は何も起こらない死の世界になる(熱的死)と考えられていた。

しかし、特に生物が関わる現象では秩序化、構造化が進行しているように見える。例えば人間社会を見ると、段々と複雑化している。建物1つとっても昔の建物よりも現代の建物の方が規模も大きく、量も沢山あり、秩序が増大しているのは明白だ。人間自体を考えても最初は受精卵という1つの細胞であったものが段々と人間の形に変化していくのだから、秩序化が進行している。つまりエントロピーは減少している。生まれた後も更に大きく成長するためエントロピーは減少し続ける。このため、生物をエントロピー的に解釈する試みが行われてきた。著名な物理学者であるシュレーディンガーは後半生で生物学にも興味を示し、生物でエントロピーが減少しているように見えるのは周囲から負のエントロピーを接種しているからであることを主張した。

この負のエントロピーのことを、ネガティブエントロピー、略してネゲントロピーという。エントロピーが増大則が成立するのはあくまで孤立系、つまり周囲とエントロピーやエネルギーのやり取りのない状態での話であり、常に周囲の環境とやり取りをしている生物ではエントロピーは減少する。逆にエントロピーを増大させないことが生物の本質とも思えるほどだ。ではその負のエントロピーとは何かということだが、例えば塩水や砂糖水は塩や佐藤と水を混ぜたもので、純粋な水よりもエントロピーは大きく、清水のエントロピーは小さい。同様に生物は負のエントロピーを接種して自らのエントロピーを下げたもの(秩序化したもの)なのだからエントロピーは小さい。このような低エントロピーのものを食して、エントロピーの大きい大小便として排泄することで自らのエントロピーを低く保つことができる。

1つの生物が周囲の生物を食べてエントロピーを低く保つことができても、そのためには周囲に低エントロピーを持つもの、例えば水や動植物がないといけない。その周囲の動植物も同様に周囲に低エントロピーのものを必要とする。つまり地球上の生物はどれも常に周囲に低エントロピーの供給源を必要としており、この供給源は実は太陽光である。太陽光は表面温度約6000℃からの放射光で、高温物質からの放射光のエントロピーは小さい。太陽光は地球にエネルギーを供給してくれていると通常は思いがちだが、ほぼ同じ量のエネルギーを地球も宇宙空間に赤外線として放射しており、太陽光が供給してくれているのは実はエネルギーではなくネゲントロピーであるそうだ。この辺りについて、大阪大学名誉教授の方が下の文章を記載していて非常に興味深い。生物とエントロピー、ネゲントロピーとの関係は深い。

エントロピーの法則と生命現象

#ネゲントロピー #シュレーディンガー

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