前回、生物が成長するときには見かけ上エントロピーが減少していることを述べた。これは生物が外界の環境とエントロピーのやり取りをしているためで、生物が成長するためにはネゲントロピー(負のエントロピー)が必要となる。これは通常食べ物や飲み物、呼吸を通じて外界とエントロピーのやりとりをすることで行っている。
単独の生物を考えたときにも生物が成長するにつれてエントロピーが減少しているが、生物の進化についても同様のことが言える。生物は単細胞から始まって多細胞生物となり、アメーバのような単純な構造から哺乳類のような複雑な構造へと変化している。つまり生物の進化という観点からもエントロピーは減少している。生物の進化の方向は単純から複雑、あるいは小さい生物から大きい生物へと向かっている。この進化の方向を司るものは何か、という疑問がわいてくる。
これについて元東北大学の教授の中沢弘基先生が明快な説明をしている。地球は太陽から膨大なエネルギーを太陽光の形で得ているが、同時に地球からも放射光を放ってエネルギーを宇宙に放出している。これを差引きしてどちらが大きいかを計算すると、地球から宇宙に放射しているエネルギーの方が遥かに大きいということだ。
地球は生まれた当初は溶けたドロドロで、段々と冷却されている歴史をみても、地球が熱を失い続けていることは明らかである。この熱放出により同時にエントロピーも失っている。熱をその系の絶対温度で割ることでエントロピーを計算できるように、熱を失うことはエントロピーも失うことになる。
つまり地球は表面からエントロピーを失い続けており、特にその影響の大きい地球表面近傍は低エントロピー状態にならざるを得ない。この低エントロピー化の影響を受けて表面近傍は構造が秩序化する方向に導かれていく、というのが生物が進化をする原動力になっている、という説明である。詳細な説明は下の本の第2章に記載されている。
この説明は極めて興味深いものとなっている。生物が進化するのは当然のようなイメージがあるが、生物が進化することには理由があり、その理由は地球という冷え続ける惑星に住んでいるためということとなる。更にこれを進めて考えると、地球が熱を失う速度はほぼ一定で、エントロピーが減少する速度もほぼ一定の筈である。一方人間の活動はどんどんと活発化していき、人間の活動は基本的にはエントロピーを下げる方向、つまり無秩序から秩序化する方向の活動をする。しかし地球としてのエントロピーの減少速度を上回るほどの秩序化はできない筈なので、人間の秩序化する活動には上限があるようにも思える。この辺りについては上記の本でも説明されておらず、どうなるかは自分でもよくわからない。しかしいずれにせよ、人間を含む生物は地球からの進化の駆動力という恩恵を受けていることは間違いなさそうだ。
#ネゲントロピー #生物の進化 #生命誕生

コメント