交通事故と自賠責保険

後期高齢者(85歳)の母親が最近歩行中に自動車事故の被害者(骨折)となりました。加害者側が残念ながら任意保険に加入しておらず、自賠責で対応せざるを得ず、母親に任せる訳にもいかなかったので色々と勉強しました。今回備忘の意味も含めてまとめてみました。なお、任意保険加入率は75%程度とのことなので、このような事例は珍しい話ではないようです。

  1. 自賠責の範囲
  2. 健康保険との関係
  3. 介護保険との関係
  4. 加害者、保険会社との関係
  5. まとめ

1.自賠責の範囲

自賠責は被害者保護のために加入が義務付けられた保険です。怪我の場合は120万円までの補償が受けられます。死亡の場合最大3000万円、後遺症の場合はその程度に応じて最大4000万円となります。

https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment.html

これに過失割合が考慮されます。歩行者と車の事故であれば一般的には車側が90%以上の過失となります。色々な類型があるのでそれを参照しながら推定することになります。因みに歩道を歩く歩行者が自動車にはねられた場合は歩行者の過失は原則0%です。

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2.健康保険との関係

加害者が自賠責にしか加入していないとき、自賠責には120万円の保証枠しかないので、健康保険を適用して頂く必要があります。交通事故に健康保険を適用すること自体は全く問題ありませんが、健康保険に「第三者行為による疾傷届」を提出する必要があります。病院にも提出を求められることもあります。

健康保険も赤字のところが多いためか、交通事故に対して健康保険適用を渋る場合も多かったようで、わざわざ厚生労働省の課長名で「交通事故にも健康保険を適用しなさい」との通達が出ています。しかも2回も。

1回目通達:1968年10月12日保険発第106号

2回目通達:平成23年8月9日 保保発0809第3号「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」

https://www.mhlw.go.jp/iken/dl/vol11_01.pdf

健康保険の適用は可能ですが、本来交通事故の医療費は加害者が払うべきものなので、健康保険から加害者に請求が行きます。このとき問題となるのが、自賠責の120万の枠内で、健康保険からの請求と被害者からの請求のどちらが優先されるか? ということです。

これについても揉めたようで、最終的には最高裁の判例が出て決着がつきました。(最高裁平成20年2月19日第三小法廷判決)

自賠責の趣旨は被害者保護にあるため、被害者の請求が優先されるべき、というもの。当然ですね。というか、このような事案で保険会社は裁判してまで被害者から分捕ろうとしたということですよね。詳細な解説は下にあります。

http://www.springs-law-chiba.com/blog/post_120.html

更に労災保険との関係でも同様に最高裁の判例が出ました。これで被害者優先が確定という流れのようです。 (最一判平成30年9月27日判決)

このような判例があるにも関わらず、自治体に第三者による疾傷届の用紙を請求すると、「私の請求よりも健康保険の請求を優先することに同意します」というような同意書を求められることがあります。こんなものに同意する必要はありませんので、ご注意下さい。

3.介護保険との関係

私の母親の場合、病院で2度手術をして約1か月で退院しました。関節部の骨折で、高齢ということもあり、すぐに完治とはいかないので、本人の希望もあって週に1度の訪問リハビリをすることになりました。そうすると次は介護保険を適用することになり、今度は介護保険に第三者行為による疾傷届を提出する必要があります。流石に健康保険のもので代用できる場合もあるようです。

調べてみると、介護保険に対しても厚生労働省課長からの通達が出ています(老介発0331第5号)。趣旨は「交通事故で介護保険を適用するときにはちゃんと第三者行為による疾傷届を出しなさい」というものです。介護保険の場合、交通事故であってもちゃんと手続をしない人が多いためと思われます。これによると届出が義務化された、と記載されています。

https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160401_9.pdf

義務化された、ということで自治体にその用紙を請求すると「加害者が任意保険に加入していない場合は用紙を渡せない」と言われました。全く意味が分かりません。

よくよく確認すると、「介護保険は適用してかまわないが、第三者行為による疾傷届は出さなくてよい」という意味のようです。健康保険と同様に、介護保険も交通事故であれば加害者に請求できる筈です。しかし現実問題として任意保険未加入の加害者から回収することは難しいので、実態として交通事故被害への介護保険適用を黙認している、と解釈しました。なかなか複雑です・・

4.加害者、保険会社との関係

加害者が任意保険に加入していれば、交渉は保険会社とすることになりますが、加入していなければ当人同士で話をすることになります。どう考えても利害が対立する当事者同士なので大変です。警察は当然「民事非介入」です。被害が大きければ弁護士事務所に相談するのでしょうが、怪我程度であればそういう訳にもいきません。自賠責の保険会社も自賠責は行政から求められるので利幅ほぼ無しでやっている、という謳い文句のようで全く間に入ることはありません。

被害者への賠償については、3種類の基準があるそうです。自賠責基準、任意保険基準、裁判基準です。前者ほど賠償額が少なく、後者になるほど大きくなります。同じ事故でも対応により賠償額が変わるというのもおかしな気がしますが、現実問題としてはこうなっているようです。

自賠責基準、任意保険基準と弁護士基準(裁判基準)損害賠償額の違い
交通事故の損害賠償金は「裁判基準」「任意保険基準」「自賠責基準」の3つ基準のうちどれかで算定され、通常は裁判基準の損害賠償額が一番高額です。裁判基準の損害賠償額は弁護士へ交渉を委任することで実現できます。交通事故の示談交渉では、提示された損...

私の場合、まだ加害者との示談が済んでいないので今後どうなるかは分かりませんが、自賠責基準で医療費、入院費用、慰謝料を加害者に請求し、加害者が自賠責に請求するという流れになります。今の状況では120万円以内に収まりそうなので大きく揉めることはなさそうです。

最後に加害者に対する処罰について。任意保険未加入の場合、被害者側は色々なことを自分で対応する必要があり、その費用、特に対応時間が弁済されることはありません。一方加害者は自賠責範囲で収まれば自腹も傷まず、不公平感、割り切れなさがどうしても残ります。しかし交通事故を起こした場合、刑事処分、行政処分、民事処分の3つの処分があります。

ここまで述べたことはあくまでも民事処分の話です。それでは刑事処分と行政処分はどうなるでしょうか?

行政処分はいわゆる点数の減点処分です。歩行者と自動車の事故で車側の責任が重い場合、30日以上の怪我で9点、3か月以上で13点の減点となります。最低でも免停60~90日、それまでに事故や処分等あればもっと大きな処分となります。

刑事処分はもっと直接的で、30日以上の怪我で30~50万円、3か月以上で50万円の罰金が科せられます。3か月以上では懲役刑、禁固刑とも記載されていますが、通常の事故であれば恐らく罰金刑でしょう。しかし額はかなりのもので、これを知ると少し安心しました。と同時に恐らくお金がなくて任意保険に加入していない加害者にとってはシャレにならない額かな、とも思いました。

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5.まとめ

これまで自分自身は交通事故に遭わずに過ごしてきましたが、事故処理はかなり面倒です。インターネットが発達しているのでここまで調べられましたが、昔であれば情報が無くて泣き寝入り、ということもきっとあったでしょう。結果的に被害者側に負担を掛けてしまうことを考えると、任意保険に加入することを是非お勧めします。

#交通事故 #自賠責保険 #任意保険

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