自賠責保険の保険金受取

2020年5月に80代中盤という高齢で独居している母親が交通事故に遭った。走行する車のドアミラーと接触した程度であったが、高齢ということもありバランスを崩して転倒して手首を骨折した。すぐに入院して、手術をして、リハビリ等色々あって2020年一杯くらいで大体回復した。年齢からすると回復しただけでも幸運かもしれない。但し骨折をした方の手首の動きはやはり事故前よりは悪くなった。

怪我は終わっても、保険の処理には時間がかかる。2021年一杯、つまり事故から1年半ほどして漸く保険の処理も終了した。母親は独居で高齢なので、保険金の手続等は代行してやらなければならなかった。しかも事故車が任意保険に加入していなかったために自賠責保険を適用することとなり、この場合には保険会社は何もしてくれないので被害者側が全て手続きをする必要がある。今回テックとは関係ないが、備忘の意味も含めて自賠責保険の受取を自分でやる場合の苦労譚をまとめてみた。以前記載した話の続きという感じになる。

事故に関わることがなければ殆ど知ることがないような事だが、人身事故により負傷した場合の保険適用には3つの基準がある。自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3つだ。どういうことかというと、同じ怪我をした場合でも自賠責にしか加入していないときと任意保険に加入しているときと裁判を起こしたときとでは支払われる額が異なるということだ。事故の被害者にとっては、事故を起こした当事者が任意保険に入っているか否かにより異なる扱いを受けるということで、なかなかふざけた話だ。この基準というのは保険会社が勝手に決めているもので、裁判沙汰になるとフルの対応をするが、自賠責にしか入っていない場合には最小限の対応しかしません、と言っているようなものだ。自賠責による負傷の上限金額が120万円であるため、致し方ない面もないわけではない。

交通事故慰謝料の「任意保険基準」とは?慰謝料3つの基準と計算方法を解説 | アトム法律事務所弁護士法人
交通事故慰謝料の「任意保険基準」について解説。任意保険基準とは何なのかがわかります。また、交通事故被害者が相場の慰謝料を得るための方法についても紹介しています。

自賠責基準でもよいから負傷による病院代等の負担を求めようとしたときに、本来であれば加害者が支払い、その分を加害者が自賠責に請求するべきと被害者側としては思うのが、いかんせん任意保険に入らないような人物はそんなことはしてくれない。病院代も支払わず、病院からの連絡も無視しているような状況となっては被害者側から自賠責に請求するしかない。制度的には被害者/加害者のどちらからでも請求可能であるが、この手の手続は基本的に多くの書類を求められ、手続が分かり難い。

母親は手術をして、退院後手首のリハビリをして、更にその後手首に入れた固定のためのチタンを取り出すための再手術をした。2度の入院とそれに伴う通院、リハビリは訪問リハビリであったため、その費用も発生し、これらの費用を自賠責保険の保険会社に請求した。保険会社に書類を提出してから1-2ヶ月ほどして、損害料率算定機構というところから連絡がきた。書類は保険会社に提出したが、実際の損害の査定はこの機構が行っているようだ。

この担当者いわく、「リハビリの費用は認められません」とのこと。損害料率算定機構の基準として高齢者で介護保険の要介護認定されている人は、事故により介護認定が上がるならばその分は損害として認定するが介護認定が変わらなければ損害として認めないということのようだ。母親の場合、事故に会う1年ほど前に足を骨折して介護認定3となり、それが治癒して本来は介護認定も2か1に変わるであろうタイミングで事故に遭った。事故後は介護認定3であるため、介護認定の度合いが変わっていない。損害料率算定機構から見ると、介護認定が変化していないためリハビリは損害として認めない、という理屈である。しかしこれはおかしな理屈で、高齢者でなければ医師のリハビリ要不要判断で決まるであろうことを、それ以外の基準を勝手に決めているということになる。母親の場合も当然医師がリハビリ要との判断を下しているにも関わらず、要介護認定の基準の方が上に来ている。おかしくないですか?と担当者に言っても「他の保険加入者との公平のためにこうしている」のようなこれまたおかしな理屈を言ってくる。それっておかしな理屈を他の人にも強いていることを公言しているようなものだ。

言っても通じないので、取りあえずは引き下がって査定の結果を待つことにした。その後保険会社から支払額の連絡が来て、入院費用等については当然支払われたものの、リハビリについてはやはり支払われず。しかも保険会社からの通知書には細かい理由等が全く記載されていない。しかも金額の誤記等もあり、極めて内容が分かり難いようなものを送ってきた。保険会社に詳しい理由と金額明細を書面で提出するよう連絡して、送られたものを見るとやはり「介護認定が変わらないのでリハビリ費用は認めない」という理由となっている。

自賠責保険において算定費用に不満がある場合、2つの解決手段がある。1つは保険会社に対して異議申立をする方法、もう1つは自賠責保険・共済紛争処理機構というまた別の組織があり、こちらに紛争処理を依頼するという方法だ。よく訳のわからない組織が沢山あることも今回学んだ。ネットで調べると、保険会社に異議申立をすると損害料率算定機構という中立組織が算定してくれる、ようなことを書いているが、内情としては、上に記載しているように保険会社は最初から算定を損害料率算定機構に丸投げしているのだから異議申立したところで結果が変わるわけない、と思い、紛争処理機構の方に依頼することにした。

これまた面倒な書類を作成して紛争処理機構に送付して2-3週間経過後、紛争処理機構の事務局のような方から電話が入った。話をすると、保険会社に異議申立はしているか? と聞いてくる。上の事情を話して異議申立は意味がないと思ったので紛争処理機構を利用させて頂いたようなことを返答すると、異議申立をすると損害料率算定機構では、当所算定した方の1つ上位の方が算定するので結果が同じとは限らない、しかし何か新証拠がないと同じ結果になる可能性もあるので新証拠を出したほうがよい、というようなアドバイスを頂いた。紛争処理機構で処理すると、有識者を集めて紛争処理委員会のようなものを作ることになり、比較的大げさな話となるので、リハビリ費用というような小物案件は上げてくれるな、という言外の意図も感じられた。

担当者が変わるなら、ということで、やはり保険会社に異議申立をすることにした。新証拠が必要ということなので、事故前と事故後のケアプランの書類を入手して、事故前後で訪問リハビリが増えたという証拠書類を添付することにした。こうして書類を作成して送付し、2ヶ月ほどで結果が帰ってきた。結果は当然ながらリハビリ費用は認定された。しかしそれを説明する書面がまた分かり難く、意図的に分かり難い書き方をしているのではないかと驚いた。

リハビリ費用と言っても実は高々数万円の話であり、手続きに要する自分の人件費の方が遥かに高くなる。最初からそれは分かっていたものの、保険会社の何とか自賠責費用を安くしようとする姿勢が頭に来ていたので今回徹底的にやることにした。結果としては、リハビリ費用数万円が認定されると治癒までに要する日にちが長くなるため、慰謝料の額がかなり増えた。自賠責では慰謝料の算定方法も決まっており、治療日数や加療日数を基準にしているためだ。これらは当然母親に振込まれ、母親からは感謝の言葉を貰った。

今回、通常は関わることのない世界に関わって、色々と考えるところがあった。現在任意保険の加入率は約75%ということなので、通常自賠責保険の請求処理は保険会社が行うことになる。そうすると、損害料率算定機構とは恐らくなあなあの関係なのだろうから分かり難い書類であってもあまり問題ではないのだろう。傷害事故であれば全体費用は120万円以下なので、そう真面目に申請、手続してくる人も少数なのだろう。とは言え、杜撰な処理、書類が横行していることを実感できた。何となく今後保険会社に対する目が厳しくなりそうに感じた。

#自賠責 #損害料率算定機構 #自賠責保険紛争処理機構

コメント

タイトルとURLをコピーしました