貨幣供給とインフレ

前回主要国で通過供給量が増えていることを述べた。通貨供給量が増えているために株やビットコインの価格が上昇しているのではないかと思われる。しかし通貨を過剰に供給すると、当然インフレになる懸念が高まる。その一方でMMT(現代貨幣理論)のように、貨幣を制御できる国においては貨幣供給量を増大させても問題ない、と主張する説もある。どちらが正しいのかは筆者には分からないが、絶対的に正しいとされているフィッシャーの交換方程式というものがあり、これを基に考察してみた。以下の考察はマクロ経済学・入門(第5版)を基にしたものである。

マクロ経済学によると貨幣数量説というものがあり、その中にフィッシャーの交換方程式というものがある。Mは一定期間の貨幣流通量、Vは貨幣の流通速度、Pは物価水準、Tは取引量を意味する。この時、MV = PT が成立する。この式は常に成立つとされる。更に実際に中央銀行が操作できる貨幣のことをハイパワードマネーと呼ぶ。ハイパワードマネーを中央銀行が操作した結果、実際の市場に供給される貨幣が上記のMで、その比を貨幣乗数mと呼ぶ。つまりM = mH が成立する。これら2つの式を合わせると、mHV = PT となり、この式も常に成立つことになる。

次にこの式の経時による変化率を考える。上の式の時間微分ということで、以下の式となる。tは時間を意味する。

dm/dt + dH/dt + dV/dt = dP/dt + dT/dt

ちょっと見難いので、dtを除いて表示する。

dm + dH + dV = dP + dT (1)

貨幣乗数m、貨幣の流通速度V、取引量Tが一定であれば、中央銀行の貨幣供給量Hが増大すると、物価Pも増大する、というのが中央銀行の本来の狙いであるが、実際には近年Hを増大してもPは増大していない。これはm、Vが減少するか、Tが増大するかのどちらかに原因がある。取引量Tは国内総生産Yとの関連が大きいということは容易に推定でき、日本の国内総生産は増大していないのでTも増大していない可能性が大きい。そうすると、mとVのどちらか、あるいは両方が減少している筈である。マクロ経済学・入門では貨幣乗数mが1970~2014年まで経時で大きく減少していることが記載されている。最近の結果は記載されていないが、恐らく減少していると思われる。

貨幣の流通速度Vについても、計算された例がネット上に公開されており、例えば下のサイトに記載されている。これによると1970年から2019年まで継続的に減少している。

上記の式(1)は変化率に関するものである。貨幣乗数はその定義より1を下回ることはない筈である。中央銀行が貨幣を供給した量は必ず市場の貨幣は増えるため。また貨幣の流通速度Vも国内経済が回っている限りはある最低限はあるものと考える方が自然だろう。現在はmやVが減少し続けているために、中央銀行が貨幣供給量Hを増大しても物価は上昇していない。しかしHの変化率は経時で確実に増大している。このときmやVの変化率に下限があるのであればHの変化率にも上限がある。今後災害等を理由にHを大きく増大させたときにインフレが起こる可能性は極めて大きいと判断する。

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